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2008. 05. 28  
2004・8 記述文拠り

 

 ホラホラ、これが僕のだ、
 生きてゐた時の苦労にみちた
 あのけがらはしい肉を破つて、
 しらじらと雨に洗はれ、
 ヌックと出た、の尖。

 それは光沢もない、
 ただいたづらにしらじらと、
 雨を吸収する、
 風に吹かれる、
 幾分空を反映する。

 生きてゐた時に、
 これが食堂の雑踏の中に、
 坐つてゐたこともある、
 みつばのおしたしを食つたこともある、
 と思へばなんとも可笑しい。

 ホラホラ、これが僕の――
 見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
 霊魂はあとに残つて、
 またの処にやつて来て、
 見てゐるのかしら?

 故郷の小川のへりに、
 半ばは枯れた草に立つて、
 見てゐるのは、――僕?
 恰度立札ほどの高さに、
 はしらじらととんがつてゐる。

    中原中也在りし日の歌』より


 中也はいまだに僕に呟いてきます。「雲の間に月はいて それな汽笛を耳にすると 悄然として身をすくめ 月はその時空にいた それから何年経ったことか 汽笛の湯気を茫然と 眼で追いかなしくなっていた あの頃の俺はいまいづこ ・・・頑是ない歌より」 あれは、そう確か僕が中学生の頃、十代の頃でした。学校の図書館の四隅の本棚にその本はひっそりと、さも僕が手にし易いように置かれていましたっけ。中原中也在りし日の歌」 この人にはじめて接した時の感動は未だに僕の記憶から消えていません。ああ、なんと悲しい歌が綴ってあるのだろう、なのに何故、これ程までに優しい心根で読み進んでゆけるのだろうか? それ以来、この人の著作、様々な作家の描く中也の実像が知りたくてたくさんの書物をひもといてきたつもりです。そこから推察されうる彼本来の性質はその悲しく優しいとはあきらかに違ってかなり猛々しいですよね。あの中也の肖像からはとても及びもしない荒々しい性格。そこからつむぎだされた読む人の心根を優しく愛撫するかのようなの羅列。僕なりのこれはまったく僕なりの私感なのですが、中也はかなりの孤高の人だったと想うのです。なかなかその境が他に理解されず絶えず苦悩していた、酒を飲み管を巻き暴言をわめきちらす中也の姿はつとに有名ですけれど、そして人としてはかなりの嫌われ者だったという気もします。ただそんな荒くれ者がえてして人間の本質をえぐることに長けていたりするものでけっして他者からむげに排除されうる存在ではないはず。そんな性質の多くの者達が世間の片隅に追いやられてゆく中で中也には、けれどがあった、つまりそれはひいては詩の世界に逃げることができた、あるいは耽溺できる世界があったとも言えましょう。「ホラホラ、これが僕の骨だ、生きていた時の苦悩にみちた あのけがらわしい肉を破って、しらじらと雨に洗われ、ヌックと出た、骨の尖。・・・骨より」 中也はいま草葉の陰でどんな管を巻いているのでしょうか?おお?い、中也!いい酒を持ってきたぞ、一緒に飲もうや!
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綾見由宇也

Author:綾見由宇也
 【作家・綾見由宇也、覚書】
 当ブログサイトは私こと綾見由宇也がこれまでにネット上で書き綴った詩文・散文・小説・コラム・雑文、あらゆる文章群の中から選り、
新たに改題・改稿・加筆・訂正を施したものを改めて公開しようと筆者なりに懸命を尽くした、
されど誠にささやかなる類いの極私的ブログサイトです。
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