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2008. 05. 26  
 少女は物心をついた頃から、詩情の世界に溶け込むことが好きだった。あからさまに口について吐けない感情も、詩に重ねれば物憂さに付託して一時(いっとき)は霞(かす)む。自身でも詩を編んだ。ゲーテには薔薇(ばら)の花弁を委ねられる想いがした。アポリネールには自然の風雅な森林を訪ねるかのような、安息観を。プーシキンには慈しみをヴェルレーヌには失望をマラルメには知を、そうしてランボーには砂塵の荒野をさ迷い歩く孤独な詩情の綾を教わった。石川啄木も宮沢賢治も室生犀星も萩原朔太郎も、きっときっと悲嘆の境地を詩に委ねているかのように、想えて、ひとり心、墜ちた。だが、最も少女が愛でた詩人とは少女と同じ言語で綾織る、この日本人の中原中也という夭折の詩人であった。気持ちが既に萎えているのである。なのに、懸命にその気持ちを奮い立たせようとするかのような、その詩の世界。寂しいような、辛いような、厳かさとその悲壮感、しんみりと哀感を摩(さす)るように、その世界は息づいている・・・。
    【自作小説よりの抽出】

  月夜の浜べ
                          
 月夜の晩に、ボタンが一つ
 波打際に、落ちてゐた。

 それを拾つて、役立てようと
 僕は思ったわけでもないが
 なぜだかそれを捨てるに忍びず
 僕はそれを、袂に入れた。

 月夜の晩に、ボタンが一つ
 波打際に落ちてゐた。

 それを拾つて、役立てようと
 僕は思つたわけでもないが
 月に向かつてそれは抛れず
 浪に向かってそれは抛れず
 僕はそれを、袂に入れた。

 月夜の晩に、拾つたボタンは
 指先に沁み、心に沁みた。 

 月夜の晩に、拾つたボタンは
 どうしてそれが、捨てられようか?

    「在りし日の歌」より

 僕は幼い時分より、詩を愛でるのが何よりも好きでした。いまだに息づいている。詩の世界に、この心を付託し続けている。死ぬまでそれは、果てないことでしょうね。 
    2006・6 筆者覚書    
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中原中也   ゲーテ   アポリネール   ヴェルレーヌ   ランボー  
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綾見由宇也

Author:綾見由宇也
 【作家・綾見由宇也、覚書】
 当ブログサイトは私こと綾見由宇也がこれまでにネット上で書き綴った詩文・散文・小説・コラム・雑文、あらゆる文章群の中から選り、
新たに改題・改稿・加筆・訂正を施したものを改めて公開しようと筆者なりに懸命を尽くした、
されど誠にささやかなる類いの極私的ブログサイトです。
 ご興味ございましたら、どうぞごゆっくりと読了くださいませ。

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